株式会社ファイバーゲート( 東証プライム/札証:9450)

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社長インタビュー記事

株式会社ファイバーゲート( 東証プライム/札証:9450)

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    公開日:2022.06.07

    ホームユースもまだ開拓余地を残すが、次の成長をけん引する事業はもう見えている

    集合住宅の賃貸物件にインターネット接続サービスを提供しこれまで急拡大してきた。同社のこの成長は、代表取締役社長の猪又氏の着眼点と先を見通した実直な取り組みによるところが大きい。

    成長を牽引してきたホームユースは端境期を迎えている。ホームユースの次なる開拓余地も既に見出し着手しているが、今後注目したいのはビジネスユースの成長可能性だ。さらに不動産賃貸や事業再生可能エネルギーといった事業も急速に立ち上がりつつある。

    そんな同社のテンバガー戦略を、代表取締役社長の猪又將哲氏に聞いた。

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    事業内容:ホームユース、ビジネスユース、その他では不動産と再生可能エネルギーを展開

    <ホームユース>
    既存物件、小規模集合住宅のマンション・アパート等の賃貸物件オーナー向けを中心に、全戸一括で入居者が「インターネット月額無料使い放題」となるインターネット接続サービスを提供。壁に埋め込んだルーターで、一棟そのものを無線LANでカバーするサービスだ。

    全国展開しており、契約戸数は、2022年6月期第3四半期時点で436千戸、全国シェア11.9%を有す。2021年6月期実績では同社売上高の83%を占める。

    <ビジネスユース>
    当社グループで提供するフリーWi-Fiサービス「Wi-Fi Nex ®」を主として観光施設や各種店舗・商店街、商業施設の施設運営者向けに提供。全国に9.1万のフリーWi-Fiのアクセスポイントを有する。2021年6月期実績では同社売上高の16%を占める。

    <その他>
    2021年に不動産事業、再生可能エネルギー事業への展開のため子会社を設立。不動産事業は不動産売買、賃貸、運用、その他関連事業を展開し、2021年6月期実績では同社売上高の1%を占める。直近、川口に自社開発のマンションをオープンした。再生可能エネルギー事業は、太陽光発電を手掛ける。

    業績動向:直近5期で売上高は8.3倍、経常利益は28倍に急成長、経常利益率は12.7pt改善

    2021年6月期に売上高8,491百万円、経常利益1,543百万円、当期純利益1,019百万円で、2016年の決算期変更後の比較継続可能期間は5期連続増収増益。

    なお、2022年6月期の会社予想は売上高10,750百万円(前期比+26.6%)、経常利益1,730百万円(同+12.1%)、当期利益1,180百万円(同+15.8%)と増収増益を見込む。2021年6月期から収益認識基準適応による会計方針へ変更済み。

    3期分の業績計画を開示しており、2024年6月期は売上高13,810百万円、経常利益2,180百万円、経常利益は15.8%と、売上高は1.6倍、経常利益は1.4倍へ拡大する見込み。

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    増収増益基調を維持するが、直近5期の成長速度や利益率改善を振り返ると、やや踊り場を迎えるように見える。何が起きており、先をどう見ているのかを猪又氏に聞いた。

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    事業戦略:捉えたニーズに応えながら強みを構築し、その強みが次の成長をけん引する

    同社主力のホームユースは、大手通信キャリアが新築物件、大型物件を中心に手掛けていたのに対し、当社は競合の少ない物件を対象とすることで成長してきた。ニッチ市場に注目し事業を展開する中で、猪又社長は常に先を見越して必要なものを手に入れてきた。

    例えば、自社で開発し内製化した価格優位性をもつルーターや通信機器だ。この通信機器類は自社開発で製造販売することにより価格優位性を実現させた。また、不動産会社とアライアンス契約を行い、相手先ブランド名でのレジデンスWi-Fiを請け負う形(プライベートブランド化)で全国展開も果たした。

    機器の開発・製造からインターネット接続サービスまで一気通貫で提供できるのは同社だけ、電気通信業界でプライベートブランド化を実現したのも同社が初の試みだった。こうして加速度的に積み上げた導入戸数は、継続的なストック収入として積み上がり、業績は急拡大した。

    民間賃貸は約1,560万戸と言われ、レジデンスWi-Fiの対象物件は約1,200万戸、そのうちの三分の一程度にネット無料サービスの導入が可能だろうと猪又氏は見てきた。現在280万戸ほど導入されていることから、既存物件の導入余地はまだ120万戸ほど残るが、猪又氏は現在の状況を「端境期」と表現した。

    従来、既存物件と新築物件の取り扱い比率は8:2だったがここにきてその比率は5:5へと変化している。既存物件市場の開拓が一巡したとみられるが、この事業で得た強みが次の成長をリードするだろう。

    まず、大手に負けない認証システムの優秀さ。そして、機器の価格優位性を背景に構築してきた、同業他社やアパートやマンションオーナー(不動産業界)とのつながり。また、自社開発のルーターや通信機器の内製化を通じて得た、機器内製化のノウハウなどが挙げられる。

    猪又氏がホームユースを説明するのに用いた「端境期」は、ホームユースだけでなく、これらの強みが同社の次の成長を牽引するまでの姿とも重なって見えた。

    成長可能性:ホームユースで堅実な成長を維持する3年、その後の成長を期待させる、ビジネスユース、不動産、再生可能エネルギー

    ホームユースについて猪又氏は、「M&Aによる規模の拡大は見込めない」と前置きしたが、「同社の価格優位性のある通信機器の提供などで、他の事業者と手を組んで、IoTの活用やアップセルなどの戦略で業界のスタンダードを作っていくことを考えている」と語った。

    また、古くなった水回り等の補修が優先されこれまでは導入の進まなかった公共・公営住宅のうち、入居率の低下傾向にある物件から導入が進むだろうと猪又氏は見ている。公共住宅は100万戸、URだけで75万戸程度と言われている。

    また、オンライン授業の機会が増えた大学の学生寮や、海外留学生の確保に注力する大学の国際寮整備の需要増加を背景に、30万戸ほどの学生寮のうち、一定数に需要を見込んでいる。

    ビジネスユースは、既に大手通信キャリアの撤退が進み競合が少ない。これまでは、商業施設に対するフリーWi-Fiの導入拡充を進めてきたが、観光バスや貸切バス等の移動交通機関向けにも展開中で、さらにこれからは医療機関、介護等の福祉施設への展開を期待している。

    入院病床を持つ医療機関では、入院患者は皆Wi-Fiを必要としている。介護施設では、接触端末でモニタリングした施設利用者の健康状態をBluetoothで集めた後に、クラウドシステムへ転送・蓄積する際にWi-Fiは欠かせない。

    ここで同社の強みとなるのが、ホームユースで投資してきた接続時のセキュリティ・認証システムだ。顧客が導入時に厚労省の補助金を活用する場合、総務省通信ガイドラインに準ずる認証システムの搭載が必須となる。ユーザー情報の取得から利用規約表示、いつ誰がどこで接続したかといった情報を追跡できるよう整備し、安全性を担保するものだ。これを満たせる業者は限られている。

    猪又氏は「通信サービスである以上、つながるのは当たり前でそれだけでは面白くない。」と考え、一時期はこの認証システムを通じて蓄積されるビッグデータを事業展開することも試みた。その案は見送ったが、レジデンスWi-Fiで確立したこの認証システムが、ビジネスユースで大きなマーケットを獲得していくにあたり強みとなる。

    不動産事業は、100%子会社の株式会社FGスマートアセットで集合住宅の開発・売買、賃貸運用等を行う。レジデンスWi-Fiを提供する中で、不動産会社やアパート・マンションの物件オーナーといったお客様との接点を通じて、様々な不動産情報が集まるネットワークを有してきた。それらの情報と、東証プライム上場の同社だからこその信用力、資金調達力を組み合わせて活用できる。

    直近、川口にオープンした物件は、自家発電自家消費型太陽光発電システム・ホームIoT・顔認証オートロック・衛星通信Wi-Fi・サイバーセキュリティ対策「DDHBOX」などの特徴を有したエコロジーマンションだ。商材が不動産のため案件規模が大きいことから「来年にはビジネスユースの売上を抜くかもしれない」と猪又氏は語った。

    再生可能エネルギー事業は、猪又氏が温めてきた「電気料金定額マンション」構想を実現する事業だ。不動産事業の川口のマンションはこの実証物件でもある。集合住宅に太陽光発電システムを搭載し、その物件内で消費する電気を自家発電することを狙う。

    「もとは2012年、震災の翌年に考えた事業だった。そこから10年が経過し、技術的な進歩、機器の価格低下が進み、実現可能な水準になってきた。」と猪又氏は語った。

    今後は、川口での実証をもとに、機器の自社開発も手掛けるという。既に不動産オーナーや自治体からの強い引き合いを受けている。それらの案件には既製品の機器を用いて対応しながら、1,2年かけて自社製品を開発し、差別化を図っていくという。

    販売においてレジデンスWi-Fiで築いた顧客基盤を活用できるだけでなく、Wi-FiやIoTといったレジデンスWi-Fiとの相乗効果で新たな販路拡大を目指し、同社としての一層明確な強みを確立しようというものだ。

    ここにあげた、成長ストーリーが事業として軌道にのり、収益貢献するのにはまだ少し時間を要するであろう。通信トラフィックの急拡大、半導体の不足、円安などの大きな事業環境の変化により、当面はコストの増加対応に迫られる面が強いかもしれない。

    しかし、コスト耐性を高めることさえも、次のビジネスチャンスに変えてしまえる堅実さがこの会社にはある。

    猪又氏の「投資家の皆さんと、もっと未来の話がしたい。ホームユースばかりではなく、ビジネスユースや他の事業の今後について質問してください。」との言葉に猪又氏の自信を垣間見た。

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    Coverage:2022年6月7日

    時価総額:205億29百万円





    当記事は、有価証券への投資を勧誘することを目的としておらず、また何らかの保証・約束をするものではありません。
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    IRTV
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  • IRニュース

  • 会社情報

    社名
    株式会社ファイバーゲート Fibergate Inc.
    本社
    〒060-0061 北海道札幌市中央区南1条西8丁目10-3 第28桂和ビル
    電話番号
    011-204-6121
    代表者
    猪又 將哲
    設立
    2000年9月26日
    資本金
    494,112,300円

    事業内容

    ・インターネット無料マンション「FGBB®」の構築、保守、運営、サポート、PB提供
    ・フリーWi-Fiスポット「Wi-FiNex®」の構築、保守、運営、サポート、PB提供
    ・VPN構築等法人向ISP事業・モバイル回線の再販
    ・通信機器の開発・製造・販売 ・インターネット広告事業


    役員

    代表取締役社長:猪又 將哲
    取締役副社長 グループ会社及び全社統括:松本 泰三
    常務取締役 経営企画本部長:濱渦 隆文
    常務取締役 営業推進本部長 兼 ビジネスユース営業部長 兼 事業開発部長:金子 尚
    取締役 経営管理本部長:石丸 美枝
    取締役(非常勤):篠田 信幸
    取締役(非常勤):島畑 知可子
    取締役 常勤監査等委員:立田 哲朗
    社外取締役 監査等委員:小幡 朋弘
    社外取締役 監査等委員:鎌田 啓志

    代表プロフィール

    猪又 將哲のプロフィール画像

    猪又 將哲(いのまた まさのり)

    1965年、愛知県生まれ。北海道大学経済学部を卒業後、損保会社勤務を経て通信業界に転身。
    1995年にマイネット代表取締役に就任し、2000年、札幌市に本社を移転してファイバーゲートを設立。 Wi-Fi事業を手がけ、2018年に東証マザーズ上場、19年に東証一部と札証に重複上場を果たす。