オークファン( 東証GRT:3674)
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公開日:2020.03.12
「実売データ×AI」の在庫管理ソリューションで22兆円の巨大市場を切り拓く
国内最大級のネットオークション価格比較・相場検索サイト「aucfan.com」を運営する株式会社オークファン。
膨大な商品実売データを軸に複数の事業を絡みあわせ、2007年の設立から12期連続で増収を果たしている。2019年度には過去最高益を更新。2020年度は前期比20%超の増収増益を見込み、独自の在庫管理ソリューションを拡販する予定だ。
そんな同社の時価総額は70~80億円。多くのテンバガー(10倍株)の共通項である時価総額100億円未満の小型株だ。
PER(株価収益率)も同業の上場企業より低く、割安銘柄といえる。ビジネスモデルや事業戦略にフォーカスをあて、中長期的な成長性を分析していく。事業内容:独自の価格情報メディアや流通プラットフォームなどを運営
<在庫価値ソリューション事業>
蓄積したビッグデータをもとに、法人向けソリューションやITツールなどを提供している。
主力サービスは、ネットショップの多店舗展開や複数ネットショップ管理の一元化システム「タテンポガイド」。おもな収益源は月額使用料である。
注目すべきは、2020年リリース予定の価格分析・設定ツール「zaicoban(以下、ザイコバン)」。詳細は「事業戦略」のパートで後述する。
<商品流通プラットフォーム事業>
BtoB取引を中心とする「NETSEA」「ReValue」、BtoC取引の「ネットプライス」「Otameshi(以下、オタメシ)」など、多様な販売プラットフォームを運営している。
本事業の本格スタートは2015年。株式上場で調達した資金をテコに、前述のマーケットプレイスを次々と買収していった(「オタメシ」は新規サービス)。
これらの販路を「aucfan.com」のユーザーも利用し、メディア事業と相乗効果を生んでいる。
おもな収益源は、商品流通額に対する手数料。「NETSEA」には約5,000社ものサプライヤーが登録し、月額の会員料も得ている。
<インキュベーション事業>
東京とシンガポールに拠点を置き、累計8ヵ国・50社以上のベンチャーに投資と事業支援を行っている。
投資先企業の事業領域はAI、データ、フィンテック、シェアリングエコノミーなど。おもな収益源は、投資先の成長を通じた株式売却益である。業績動向:2007年の創業から12期連続増収。2019年度は過去最高益
同社の設立は2007年6月。翌年には「aucfan.com」有料会員サービスとスクール事業を開始し、広告収入に頼らない成長をとげる。
上場初年度(2013年9月期)の売上高は7億5,100万円、経常利益は3億100万円。その後は積極的にM&Aを進め、事業領域を拡大。
市場規模の大きなBtoB流通事業を展開する。その過程で連続増益は途絶えたものの、直近2期は過去最高益を更新。
2019年9月期の売上高は66億3,600万円、経常利益は6億7,200万円である。事業別の数字をみると、メディア事業とマーケットプレイス事業は堅調、ソリューション事業は不調、インキュベーション事業が好調だ。事業戦略:企業の滞留在庫を「診断」「治療」「予防」して、流通を最適化
そもそも、オークファンの中核事業はなんだろうか? 同社は2019年度の決算説明資料において「オークション比較でも、eコマースでも、在庫処分でもなく、流通を最適化する企業」と再定義している。
ここでの‟流通の最適化”とは、滞留在庫の流動化を支援すること。毎年22兆円規模(同社推定額)で廃棄処理される法人在庫を適切な価格で適切なマーケットに届ける事業だ。
事業戦略の要となるのが、価格分析・設定ツールの「ザイコバン」。正式リリース前から問い合わせが殺到し、「すでに複数の大手小売企業が導入済み」と同社代表の武永修一氏は明かす。
これはECサイトや実店舗などの商品流通データをもとに、AIが在庫の時価を算出(診断)する画期的SaaS。
コンサルティングによる再流通支援(治療)と滞留防止(予防)につなげていく。
具体的には在庫商品の時価評価をもとに、EC・店頭・業販といった最適な販売経路をレポートし、高値で売り切るための価格設定が提案される。
ダイナミックプライシング(価格変動制)が可能になり、在庫滞留による減損も大幅に改善できるだろう。
将来的には属人的な仕入れや販売の仕組みを排除し、流通・小売業全体を革新する可能性もある。
そして、法人在庫の再流通を担うのが同社の多様な販路。「NETSEA」「ReValue」などのマーケットプレイスはもちろん、アジア各国に展開中の越境EC、「aucfan.com」ユーザーやスクール受講生もネット上の卸商として機能する。
副業解禁のトレンドも追い風となり、流通経路の多様化が進むだろう。代表の武永氏は「バランスシートの可視化に関する知財が認められ、ビジネスモデルの全貌を説明できるようになった」と述懐する。
バランスシートの可視化(在庫評価)については、銀行からの依頼も増えているという。社会貢献型の流通プラットフォームを活用し、食品ロスを減らす
「ザイコバン」以外にも高い関心を集めているサービスがある。
社会貢献型ECサイト「オタメシ」だ。これは賞味期限間近などのワケあり商品を割安で販売し、食品などの廃棄を防ぐサービス。
SDGs(持続可能な開発目標)のひとつである「つくる責任とつかう責任」の実現をめざしている。
2019年12月には、オークファンの100%子会社と農林中央金庫の連携を発表。規格外野菜の再流通など、食品ロスの削減に向けた取り組みを加速している。
今後はSDGs関連銘柄として、注目を浴びる可能性もあるだろう。なお、同じBtoC取引の「ネットプライス」は業績不調。
ギャザリング(共同購入)の流行が去り、減収が続いている。好調な「オタメシ」と統合する計画を示した。成長可能性:独自路線で業績堅調。革新的サービスを武器に飛躍する可能性も
テンバガー(10倍株)の株価上昇は「短期的に急騰」か「中長期的にじっくり上昇」の2パターンに大別される。
急騰銘柄の動きは、社会の流れや好材料の発表によって大きく左右されやすい。一方、じっくり上昇するタイプの銘柄は、中長期的な業績拡大が株価を支える。
オークファンは創業から12期連続で増収を果たしており、事業モデルの独自性も高い。
「じっくり上昇型」として、テンバガーの潜在力があるだろう。とはいえ、業績拡大を続けても株価が上がるとは限らない。
市場の期待感や今後の成長率などを注視する必要がある。オークファンの場合、株価のピークは2013年の上場直後。
業績自体は順調に伸び続けているものの、市場の期待感が落ちているのだ。その一因と考えられるのが、2015年以降の事業領域の拡大。
マーケットプレイス事業はメディア事業よりも利益率が低く、関連性もわかりづらかったからだ。
しかし、2019年に発表した事業モデルの再定義によって、そういった疑問は氷解。
バラバラに見えた各事業を在庫管理ソリューション事業(診断・予防)と商品流通プラットフォーム事業(治療)に再編し、一気通貫のビジネスモデルが明確になった。
同社資料によると、滞留在庫の再流通を直接支援した総額は約96億円(2019年度)。その売上回収率は37.6%の高さだ。
ターゲット市場の規模は約22兆円。したがって、診断ツールの「ザイコバン」が普及するほど同社の直接流通額(≒治療)が増え、手数料収入が飛躍的に伸びる可能性がある。
「ザイコバン」の顧客対象は広く、競合企業も少ない。大手企業の参入は脅威となりうるが、膨大な実売データとその解析力は容易に追いつけないだろう。
代表の武永氏は「2020年度は第2創業」と決意を新たにする。オークファンの動向から目が離せない。
当記事は、有価証券への投資を勧誘することを目的としておらず、また何らかの保証・約束をするものではありません。
投資に関する決定は利用者様ご自身のご判断において行っていただきますようお願い申し上げます。 -
IRニュース
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会社情報
- 社名
- オークファン Aucfan Co.,Ltd.
- 本社
- 〒141-0021 東京都品川区上大崎2-13-30 oak meguro 3階
- 電話番号
- 03-6809-0951
- 代表者
- 武永 修一
- 設立
- 2007年6月1日
- 資本金
- 8億6,115万円
事業内容
在庫価値ソリューション事業
商品流通プラットフォーム事業
インキュベーション事業
役員
代表取締役社長 武永 修一
取締役 海老根 智仁
社外取締役 嶋 聡
社外取締役 門脇 英晴
常勤監査役 梶 尚人
監査役 石崎 信明
監査役 渡邉 清
代表プロフィール
武永 修一(たけなが しゅういち)
山口県生まれ、2000年大学在学中に、個人事業としてオークション事業を開始。2003年 京都大学 法学部卒業。2004年 株式会社デファクトスタンダード設立。2007年 株式会社オークファンを新設分割により設立。